エンジンOH

 

エンジン不調の理由を探るべく、手持ちのセンサー類で交換して、様子を見てみるものの、

何も変わらないので、一筋縄ではいかないようです.

とりあえず、失火をしている2番の圧縮を測って見ることに.

でも、コンプレッションテスターのゲージが動かない.

壊れたのかと思い、1番を測ると8kgくらいはあるようなので、壊れてはいないようです.

ついでに3番も測ってみることに、、、8kgくらいはあるので、ゲージは壊れていないようです.

再度、2番を測るとゲージは良く見ると動いている模様です.

しかし、目盛りがない範囲なので、外挿してみると3kg?ということになりそうです.

何度やっても変わらずなので、どうも圧縮がないようです.

これで、解決です.エンジン不調の理由も納得できます.

棚オチなので、ブーストかければ、擬似的に圧縮比が上がるのでそこそこ走れるが、

ブーストがかからないアイドル付近ではほとんど火がつかない.

ついでに、ブローバイがたくさん出るのも納得だし、、、

とはいえ、棚落ちでシリンダにキズがつくと非常に面倒なことになります.

なぜなら、軽自動車のオーバーサイズピストンの供給がないためです.

オーバーサイズを入れるとどうやっても660ccを超えてしまうからです.

補修用なら仕方がない気がしますが、、、、

なので、シリンダのボーリングは出来ないので、シリンダにキズがついていたら、シリンダ交換です.

棚落ち確定なので、エンジンを開けるしかないです.



まずは、整備書を購入し、オーバーホールの手順を確認します.

しかし最近?のクルマらしく、

エンジン下ろしは、ミッションごとサブフレームと足回りとあわせて下ろすようです.

クラッチ交換では、ミッションだけ降りるようなので、エンジンだけでも下りると思いますが、確証はないです.

いろいろ調査しても、エンジン単体で下ろしている例はほとんどなく、やってみなければわからん状態です.

というわけで、事前調査の意味のなく、作業に入ります.

最悪、サブフレームごと下ろせるように車庫内でやるか、作業性を重視し、ピット上でやるか考えましたが、

一か八かピット上で作業することにして、段取りをします.



ここで問題が2点発生.

エンジンクレーンの足がピットの枠より狭く、エンジンクレーンが使えない.

これでは使い物にならないので、ピットの枠を加工し、エンジンクレーンがぎりぎり入るようになりました.

もう一点は、エンジンクレーンのアームの長さが足りず、エンジンまで届かない.

カプチのエンジンはずいぶん奥まっているのか、無駄にボンネットが長いのか、、、

やむなく、バンパーなどフロントの部品を外せるだけ外しました.

これで、どうにか、準備は整いました.

 



早速、作業に入ります.

フロントをジャッキアップして、タイヤを外します.

ピットを使って、アンダーカバーやバンパーを外します.

これで作業準備は完了です。



あとは、ひたすら周辺部品を外し、スペースを確保します。

バッテリを始め、インタークーラーやマフラーなども外していきます。

さすがに、インマニやエキマニは外せないので、つながっている配管を出来る限り外します。

作業スペースの都合上、触媒以降を外しました。デスビも外しました。

当然エアコンコンプレッサやオルタ、スタータも外します。

忘れてはいけない燃料ホースやアクセルワイヤー、クラッチワイヤー、配線類も外し、

エンジンとボディにつながっているものがないか、念入りに確認します。

よくアースがつながっていたりしますので、要注意です。

手の届く範囲が外し終われば、エンジンマウントやミッションとの結合ボルトまでアクセスできます。

 

 



念のため、エンジンクレーンでエンジンを持ち上げた状態で、ミッションボルトやエンジンマウントを緩めます。

すべて緩んだら、ボルトを外し、エンジンをミッションから抜きます。

固着などがあるので、プライバーでこじって外しました。

結構、いい感じではまっていたので、付けるときが大変そうです。

エンジンが下りてしまえば、後はエンジンスタンドに移動し、ひたすら外していくだけです。

エンジンスタンド無しでエンジンをばらすのは、現実的ではないと思います。

 

 



エンジンの状態を確認しながら、ひとつひとつばらしていきますが、とくに異常は見当たりません。

ヘッドを剥ぐってみても、特段異常はありません。

最悪ケースではなく、リングの固着かとほっとし、腰下をばらしていきます。

で、懸案の2番ですが、ピストンを外すと、部品がぽろぽろと、、、

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よくよくピストンを確認するとセカンドランドが棚落ちしてました。

棚落ちってトップランド欠損だと思っていたので、意外な落とし穴でした。

セカンドリングはばらばらでした。

 

 

まあ、これだけで済めば、通常のOH+ピストン1個なので、安いもんです。

が、シリンダをみると、当然、ばらばらなリングや落ちたピストンの部品でシリンダに傷が付いています。

まあ、トップランド欠損で燃焼室で暴れ、ヘッドを壊すよりはだいぶましですが、、、

で、この傷の深さですが、結構深いです。

 

 

ダメ元で2番だけ、念入りにホーニングをしてみました。

かろうじて、傷が消えるところまでになりましたが(2時間かかった)、

寸法的には、0.25のオーバーサイズが必要です。

いったんボーリングして、ホーニングするなら、0.5のオーバーサイズが必要なくらいです。

通常は、オーバーサイズピストンでOKなんですが、

軽自動車の場合、オーバーサイズを入れると排気量が660ccを超えてしまうので、

メーカーからのオーバーサイズピストンの供給は有りません。

となると、社外のレース用鍛造ピストンか流用ピストンとなり、700cc超えとなります。

ってことは、厳密には白ナンバーとなります。

これでは、カプチーノの意味が半減ですので、ノーマルピストンですと、ブロック交換となります。

韓国製のOH用の0.25とか0.5のオーバーサイズピストンもあるのですが、

過給機付きということで耐久性が不明なので、悩ましいところです。

前オーナーがブーストアップ対応のECUを入れているので、せっかくなら、生かしたいですし、、、

というわけで、新品ブロックは高いので、中古を探します。

F6Aのメリットは共通部品が多いことです。ですので、ターボの付いたF6Aはブロック共通です。

年代により、いくぶん改良はされているようですが、流用は可能です。

ですので、アルトやワゴンR用もOkです。

しかし、安い車ほど、オイルと水の管理が悪く、年代も年代なので、

使い物にならないエンジンも多数流通されていることは容易に想像できます。

なので、選ぶのがほんとに大変です。

結果的には、激安のアルトワークスのDOHCターボを購入しました。

タービンから白煙+オイルダダ漏れの10万km車です。

これの良いとこと必要な部品(ブロックとピストン)を流用して2個1の予定です。

が届いてビックリ。

保管状態が悪く、プラグホールに水は入っているは、水をキチンと抜かなかったらしく、さびも出ています。

とはいえ、ほしいのは最悪ブロックだけですので、、、、

基本、再組立ての予定はないので、インパクトでガンガン外していきます。

ボルトも部品も段ボールにぶち込みながら、、、

30分ほどでバランバランです。

結果的には、予想通りのオイルおよび水管理の悪いエンジンでした。

ブロックもさびだらけでして、片手いっぱいのさびが出てきました。

ウォータージャケットから、地道にさびを掻きだします。

ブロックは見た目は悪いですが、シリンダはばっちりでしたので、使用可能です。

しかし、オイル管理が悪いため、ピストンは真っ黒、リングも固着してました。

タービンから白煙ではなく、ピストンリング固着による白煙だと思います。

なんせ、ピストンからリングが外れない。ついでに、ピストンのオイル穴もすべてスラッジで埋まってました。

とりあえず、必要な部品は使えそうなので、洗浄を始めます。

 

 

 

 

 

今回は、モノタロウの水溶性の洗浄剤を使用しました。1000円で20Lくらいは作れます。

バケツにお湯と洗浄剤を入れ、ブロック、ピストンなどを入れます。

ものすごい泡が出ます。で、一晩漬け置きました。

これが、見事にきれいになる気配があります(笑)

ですので、よく週末まで、ちょこちょこ状態を確認しながら、放置です。

週末には、見違えるほどきれいになった部品たちが、、、

さすがに、固着したリング溝やオイル穴はダメですが、燃焼室の煤などはきれいに落ちてます。

今までは、ワイヤーブラシでこすっていたので、簡単きれいで非常楽ちんです。

きれいになったブロックは、得意の高圧洗浄機で洗います。

さびやスラッジもろとも洗浄です。でも、すぐさびちゃうので、洗浄後は、エアブローして、天日干しです。

ブロックは、軽くホーニングして、面研する準備です。

さびなどを落として、塗装します。鉄ブロックですので、、、

キャラのときは、黒ブロック赤ヘッドでしたが、カプチはシックに決めるということでボディ色のシルバーです。

耐熱塗料でブロックを塗ります。結構、塗膜が厚く、いい感じの光沢です。

 

 



ヘッドは、アルトの奴の状態がいまいちなので、カプチーノ用を使用します。

バルブまですべてばらばらにして、洗浄剤→高圧洗浄です。

ヘッドも面研に出します。

とくに不具合はないのですが、せっかくなんで、きれいにしておこうかと、、、

面研は、いつものところで立会で作業をしてもらいます。実父ですが(笑)

 

 



というわけで、基本加工も終わり、必要部品も揃いましたので、組み付けに入ります。

F6AのエンジンOH時の基本コンセプトは、10年持たせることと液漏れさせないことを徹底的にやることです。

なので、組み付け時のすべてのガスケットはすべて液体ガスケット併用です。

賛否有ると思いますが、液漏れの寿命は延びていると思います。というわけで、腰下から始めます。

とくに順番とかは考えずに、気になるものから取りつけます。

とりあえず、液体ガスケットを塗って、フリーズプラグを付けます。

これを忘れるとあとで、水がダダ漏れですし、後からはなかなか付けにくい場所にあります。

後は、新品のクランクメタルをおいて、クランクを取りつけます。

締め付けトルクは、マニュアル通りです。

クランクがついたら、フロントのオイルポンプとリアのオイルシールを取りつけます。

これまでの紙からメタルに変更されているようです。

クランクがついたら、エンジンを逆向きにして、ピストン挿入です。

まずは、ピストンにピストンリングを取りつけます。

リングエクスパンダがないとリングが折れる可能性が非常に高いです。

向きと順番がありますので、注意が必要です。


ピストンにリングがついたら、コンロッドを取りつけます。

針金みたいなスナップリングですが、機能は果たすようです。

で、ここまで完成したら、ピストンリングコンプレッサを使用してピストン挿入です。

プラハンでたたきながら、シリンダ内に落とします。

このとき、クランクは下死点です。

コンロッドメタルを取りつけ、ゆっくりクランクを回しながら、大端部を固定します。

ここもマニュアル通りの規定トルクです。

これを3回繰り返し、腰下ほぼ完成です。

後は、ウォータポンプを付けたり、オイルクーラを取り付けたりします。

 

 

 





で、ある程度形になったところで、ヘッドを載せます。

ヘッドは、電動ドリルを使って、バルブすり合わせをして有ります。

ステムシールも新品交換します。バルブスプリングの取り付けは、バルブスプリングコンプレッサが必要です。

コッタはピンセットでいれていきます。

このときのバルブスプリングコンプレッサの締め付け具合で、入りやすさが決まります。

経験です。

ちなみに今回は、インテーク側はあまり段ツキがなかったのですが、

エキゾースト側がだいぶひどかったので、ポート研磨しました。

まあ、ターボ車なので、意味ないですが、、、

F6Aの場合は、ヘッドはここまでです。

 

 

 

カムシャフトはカムホルダーに入っていて、ヘッドの上に乗せる構造です。

ヘッドガスケットの向きを間違えないように、ブロックの上に置き、ヘッドを載せます。

ヘッドボルトを締め付ければ、とたんにエンジンらしくなります。

 

 



ここからは、インマニやエキマニを付けていきます。最後にカムホルダーを載せます。

カムシャフトがついたので、タイミングベルト関連を取り付ければ、エンジンはほとんど完成です。

あとで、取り付けられないような部品だけ付けておきます。

 

 



ここまでで使ったい新品部品ですが、ガスケット類は当然ですが、メタルは親子、スラストも交換しました。

ピストンリング、ウォータポンプ、ステムシールも新品です。

水周りのホースもすべて新品交換です。在庫削減の為か、曲がったホースまでも1本ものになってしまい、

ちょっと不安もあります。

それ以外は、数年前に交換しているようなので、そのまま、再利用です。

タービンもブローしているとの話でしたが、シャフトのがたもなく、問題なしです。

単純に棚落ちでブローバイが異常に出ていただけだと思います。

ちなみに、インテークの配管類も耐熱シルバーで塗装しました。

さらに、カムホルダーは、ワイヤブラシで磨くとアルミ光沢が出るのをいいことに徹底的に磨きました。

そのままでは、すぐに酸化するので、アルミ用クリア塗装をしました。

これが失敗。

天気がいまいちだったのもあると思いますが、白濁して、

せっかくの金属光沢がくすんだ白になってしまいました。

これでは、意味ないので、耐熱シルバーで塗りなおしました。

労力は無駄になりましたが、、、

 



というわけで、後は、再度、エンジンクレーンに載せ、フライホイールやクラッチを取りつけます。

で、エンジンマウントとミッションマウントを新品にして、エンジン搭載です。

想像以上に簡単に搭載できました。

 

 

 

 

後は、ひたすら外した部品を元に戻していきます。